女性活躍の支援策は前進するも、男女の意識差は拡大し、ジェンダーギャップはさらに深まる

女性活躍の支援策は前進するも、 男女の意識差は拡大し、ジェンダーギャップはさらに深まる

Insight TechとSHeStands、「日常の悩みとジェンダーギャップとの関連性調査」を前年に引き続き実施
女性活躍の支援策は前進するも、男女の意識差は拡大し、ジェンダーギャップはさらに深まる

株式会社Insight Tech(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:伊藤友博)と、株式会社SHeStands(本社:東京都港区、CEO:佐藤圭子)は前年に引き続き、全国の子育て世代(20-49歳)男女を対象とした「日常の悩みとジェンダーギャップとの関連性調査」を共同で実施いたしました。

2021年は、育児・介護休業法改正など女性の活躍支援に関するインフラ整備やルール制定で多少の前進が見られました。しかし、長期化するコロナ禍により、男女の意識の格差が拡大。ジェンダーギャップが起因する悩みも、昨年より男女ともに増えました。また、オンライン化が普及する中でも、メンタルケアの受け皿となる支援サービスや相談機関などを活用したことがある人は1割に満たず、活用そのものへの高い壁があることもわかりました。「ジェンダー平等」が新語・流行語になる一方で、男女の悩みの対象はますます開きを見せ、男性はより「仕事」に、女性はより「家事」「育児子育て」に意識が向けられており、実態としては「ジェンダー平等」からの後退が明らかになりました。

要旨

・「ジェンダー平等」が新語・流行語大賞にノミネートされる2021年ではあったが、女性活躍推進に関する法整備や性差撤廃などの具体的な動向は印象が薄く、男性の関心も低いことが明らかになった。

・女性が抱える悩みは、ジェンダーギャップの影響が根深い状況は変わらず。「家事の負担(36%)」や「育児や子育て(42%)」の悩みを抱えている女性は3分の1以上にのぼるのに比べ、男性は20ポイントも少ない。男性の悩みは「仕事のやりがい(46%)」や「仕事の評価や昇進(40%)」が多く、前年より5ポイント程度上昇していることからも、男女で悩みの対象にギャップが広がっている。女性の約9割が異性をうらやましく感じた経験を持つ。家事や子育てを女性は「減点方式」、男性は「加点方式」で評価する風潮に憤りあり。

・コロナ禍の長期化による先行き不透明感もあり、キャリアを断念するきっかけとして「出産(32%)」や「育児・子育て(28%)」が前回から5ポイント程度上昇。「配偶者や子供のサポート」は男性よりも女性が担っている状況。一方で、新たなキャリア形成への再挑戦意欲は昨年から9ポイント上昇し、68%に。リモートワーク推奨や法改正(育児休業法)など2021年の労働環境改善で選択肢が増える人も。「女性が活躍できる社会づくり」が進んでいる実感は男性で3割弱、女性1割未満と総じて低い状況が前年から続いている。

・女性が相談できるサービスやコミュニティに対するニーズは1割程度存在しているものの、実際に利用できている人はその半分にも満たない。

・最も印象に残った「2021年日本国内のジェンダーに関する出来事・話題」は、「東京五輪の森喜朗会長が女性蔑視発言(39%)」。

共同調査の目的

世界経済フォーラムが2021年3月30日に発表した「ジェンダーギャップ指数*1」において、日本は120位と先進国の中では最も低い順位となっています。2021年は「ジェンダー平等」が新語・流行語大賞にノミネートするなど、ジェンダー関連の出来事を見聞きすることが多く、働く女性を支援する法整備(育児・介護休業法改正等)が進められました。22年度もジェンダーギャップ指数の発表は予定されており、国際的な基準で日本に改善が見られるかどうかが注目されます。 コロナ禍が始まった2020年は女性の自殺者数増加に注目が集まりました。*2 その一因として、パート・アルバイトなどの非正規労働者の多さがあり、予期しない解雇・休業を発端とした生活困窮が挙がりました。2021年は自殺者数が2年ぶりに減少したものの、自殺理由として「生活苦」が増えており、女性は26%と、男性の10%の倍以上という結果になっています。*3 この背景には、日本の労働環境に根深く残るジェンダーギャップの影響があると考えられています。 こうした状況の中、Insight Techは、前年に引き続き、女性たちの経済的、精神的自立に向けた長期的支援を目的としたソーシャルビジネスを展開するSHeStandsと共同で、日頃の不安や悩みについての調査を実施しました。Insight Techが独自運営する「不満買取センター」に登録する子育て世代男女(20-49歳)が家庭や職場で抱える悩みや不満などの「生の声」を吸い上げ、社会のジェンダーギャップとの関連性を明らかにし、ジェンダージャップ解消に向けたヒントを得ることを取り組みの目的としています。

*1ジェンダーギャップ指数:世界経済フォーラムが公表している「Global Gender Gap Report」の中で示される各国の社会進出における男女格差を測る指標。

*2 2020年の国内自殺者数:警視庁「令和2年中における自殺の状況」 https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R03/R02jisatunojoukyou.pdf

*3自殺者、2年ぶり減少=コロナ影響?生活苦動機は増―厚労省(時事通信社令和4年1月21日報道より)
https://sp.m.jiji.com/article/show/269220

調査結果トピックス

1)女性の悩みは主に「家庭」「仕事」あるいは「その両立」について。男性は「家庭」より「仕事」に意識が向いている。1年前と比較して、男女の意識差が拡大し、よりジェンダーロールに基づくものへ 日頃の不安や悩みをみると、女性は「家事の負担」や「育児や子育て」など、家庭に関するものが多く、前回調査と比較して女性は「育児や子育ての悩み」が増加し、男性は「仕事」や「今後のキャリアプラン」の悩みが増加と、男女差が拡大している。共働き世帯では、男性の家事や育児への関与·協力意識の低さも垣間見えた。コロナ禍の長期化に伴う先行き不透明感によって、夫や子供のいる有職女性は「配偶者や子供の近未来(育児や学校生活)へのサポート」をより意識せざるを得ない状況が生まれている様子がうかがえる。

<図1> 日頃の不安や悩み

2)女性の約9割は異性をうらやましく感じた経験あり。(1年前と変わらず) 家事や子育てに対して、女性は「減点方式」、男性は「加点方式」で評価されることに不公平感あり。

女性の約9割が「異性(男性)がうらやましい」と感じることがあると回答していることに加えて、ジェンダーギャップを起因とする不安や悩みを抱える人も前年よりやや増加し、8割を超えている。前回調査から女性で「仕事に対する評価」や「職場での人間関係」などは減少したが、「仕事と家庭との両立」「家事の負担」は継続して3割超と高く、「ジェンダー平等」が新語・流行語大賞のトップ10入りした2021年においても、意識改善が大きく進んだとは言えない状況である。 コロナ禍という状況下では、「夫や子供のことを優先せざるを得ないのは当然」という社会の風潮に対して憤りのコメントが目立ち、メディアやSNSに出現する「育メン(イクメン)」という表現からも、男性は「加点方式」、女性は「減点方式」で家事や子育てを評価されることに不公平感を募らせている。

<図2-1> 「異性がうらやましい」と感じたこと
<図2-2>「異性がうらやましい」と感じる内容
<図2-3>「性別による待遇や立場の違い」が影響している不安や悩み
<図2-4>「異性のことをうらやましい」と感じた経験

3)女性の2-3割は出産や育児・子育てがきっかけでキャリアを断念。(1年前と変わらず) 女性は結婚、出産、育児がキャリア形成(社会的な活躍)に影響を及ぼす人が多く、自分よりも配偶者の仕事を優先する傾向が男性より目立つという状況は変わらない。(前回調査よりやや悪化)「自分が家事・育児をしっかりしないと、家庭がうまくまわらない」という意見が散見され、自治体・企業・身の周りの人からのサポートやケアに期待が持てない状況がうかがえる。

<図3-1>キャリア形成をなにかの事情で断念した経験の有無
<図3-2>キャリア形成を断念する主なきっかけ

4)キャリア断念後の再挑戦意向はこの1年で高まりを見せている。「自宅でのフルリモート勤務」導入企業の増加が影響か。 育休や産休などでキャリア形成を途中で断念してしまう女性の中で、勤務先への復職や新たなキャリア形成などに再挑戦しようと考えている人は全体の約7割にのぼり、この1年で大きく増加している。自由回答を見ると、コロナ禍をきっかけに「自宅でのリモートワーク」が働き方の選択肢の1つとして一般化したことが、家事と育児の両立や再挑戦への可能性につながっている様子が見られた。

<図4-1>キャリア断念後の再挑戦意向【ベース:キャリア形成を断念した人・断念する可能性がある人】
<図4-2>コロナ禍で「リモートワーク」に可能性を感じる声

5)「女性が活躍できる社会づくり」の進捗を実感している女性は3割未満に留まる。(1年前と変わらず) 「女性が活躍できる社会づくり(働きやすい環境づくり)」が進んでいるという実感(とても感じる・感じる計)は女性で1割未満、男性でも3割未満と全体的に低く、性別差も見られる。共働き世帯の回答に限定しても同様の結果となり、「社会におけるジェンダーギャップ」が2021年も未だ解消されていないことが確認された。

<図5>現在の日本は「女性が活躍できる社会づくり(働きやすい環境づくり)」が進んでいると感じるか

6)「女性が活躍できる社会」に必要なものとして「リモートワーク環境の整備」が挙がる。 「託児所や保育園を増やす」といったハード面、「男性側の時短勤務や産休・育休取得の義務化・強制化」のようなソフト面の充実を求める声は変わらず多い。一方、コロナ禍によって「自宅でのリモートワーク主体」の働き方になった人は、家事や育児に対する負担軽減の恩恵を受けたという言及が目立った。 「保育園に子供を預けられない(人数制限や諸費用の問題)」という人の対処策としても「リモートワークの推進」に対するニーズが強い。

<図6-1>女性活躍社会のために必要だと思うこと

7)「仕事」や「仕事と家庭の両立」への悩み相談サービスのニーズは存在するが、アクセスは限定的 (1年前と変わらず) 仕事に関する不安や悩みを相談できる相手は身近にいる「家族や友人」が大半を占める。前回調査と比較して、「仕事のやりがいやスキルアップ」や「仕事と家庭の両立」に対する不安や悩みを勤務先の同僚や上司に実際に相談する人の増加傾向が見られた。前回調査と同様、カウセリングや専門家のアドバイス、ネット上の匿名コミュニティを実際に利用したことがある人は全体の数%程度しか存在しないが、これらを今後利用したいと思う人は1割程度存在し、潜在的な期待・ニーズがうかがえる。「緊急の家事・育児代行サポート」のような人的バックアップだけではなく、「母親の社会的孤立や家事育児の悩みを気軽に相談できるアドバイザー・理解者の存在」を求める声が見られた。

<図7-1>「仕事と家庭との両立」の不安や悩みを相談してみたい相手・相談したことがある相手 【ベース:女性&「仕事と家庭との両立」の不安・悩みあり】
<図7-2>「仕事のやりがいやスキルアップ」の不安や悩みを相談してみたい相手・相談したことがある相手 【ベース:女性&「仕事のやりがいやスキルアップ」の不安・悩みあり】

8)2021年は「東京オリパラでの森喜朗会長の女性蔑視発言」の悪印象が強く残り、ジェンダー平等に関する施策やルール整備については総じて印象が薄く、男性の関心も低い 「東京オリパラ大会組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視発言」は印象に残ったが、「育児・介護休業法改正」・「夫婦別姓認めず 2015年に続き 『合憲』」・「ジェンダーレス制服の採用」などの職場や学校などのコミュニティにおけるジェンダーに関する法整備や性差撤廃の動きについては印象が薄く、男性の関心も低い。「ジェンダーギャップ指数」の低さを納得せざるを得ない状況になっている。

<図8-1>最も印象に残った「2021年日本国内のジェンダーに関する出来事・話題」
<図8-2>最も印象に残った「2021年日本国内のジェンダーに関する出来事・話題」の理由

アンケート結果に対する提言と今後の展開

ジェンダーギャップ指数2021や今回と前回の調査結果を見る限り、日本社会には依然として根深いジェンダーギャップが存在しており、女性の社会的な活躍やキャリア形成の推進を妨げる原因になっている。

2021年は、「育児・介護休業法改正」やコロナ禍の長期化による「リモートワーク推奨」など、女性の仕事と家庭の両立に関するソフト面(制度・支援策)の前進が見受けられた。一方で、「託児所や保育園を増やす」といったハード面(施設・インフラ)の充実を求める声は依然として多い。

今回調査では、男性の「ジェンダー平等」という考え方や関連する出来事に対する関心の低さが確認された。また男女の悩みの対象も、ジェンダーロール(性別役割分担)に根付いたもので、前年よりも意識の拡大が見られた。女性にも「男女の役割に対する固定観念」や「家事や育児は母親が担うべきという思い込み」が根強く存在していることもわかった。男女間でお互いの生活を平等に支え合う意識には依然として乖離がある状況である。

この状況を改善するためには、政府や自治体による啓蒙活動や企業の法令順守だけでなく、若い世代(幼少期)からジェンダー教育を通じて、マインドセットやリテラシーを高める取り組み(義務教育やSNSでの表現方法やマナー等)が必要であると考えられる。

また、長期化するコロナ禍で、ジェンダーギャップに起因する日頃の悩みが増す中で、不安や悩みの相談にカウンセリングや専門家のアドバイスへのニーズはうかがえるも、それを利用している人が、未だに少ない状況。オンライン化の普及により、アクセスしやすい環境が整う中でも、利用に対するネガティブイメージや心理的バリア(経済的な問題も含む)は依然として存在すると考えられる。

これらを踏まえると、「ジェンダー教育」に加え、前年に引き続き、「相談機関(受け皿)の強化」と「相談しやすい文化(弱さを出し合え、助けを求めることを恥じない風土)の醸成」を進めることが、日本のジェンダーギャップ解消に向けた第一歩になると考えられる。

Insight Techは自社が運営する「不満買取センター」を通じて、日常の不満や不安を気軽に投稿・シェアできるコミュニティを醸成し、寄せられた声に基づき世の中への課題提起や政策立案につなげていくことで、ジェンダーギャップ解消に向けたハブの役割を担っていきたいと考えています。

SHeStandsは女性のライフプランやキャリアにまつわる相談や悩みに寄り添い、毎日を前向きに生き、豊かな生活をクリエイトする手助けをすることで、社会の好循環の促進に努めて参ります。

調査概要

調査名 : 「日常の悩みとジェンダーギャップとの関連性調査」 あなたの日常生活や働き方に関するアンケート 調査対象: 不満買取センターに登録している全国20歳から49歳までの男女 調査期間: 2021年12月17日から2022年1月7日 調査方法: 不満買取センターのサービスサイト上でのアンケート 主な質問項目: あなたご自身について(家族構成・働き方 等)        ご自身の不安や悩み(不安や悩みの有無・相談相手の有無 等)        異性をうらやましいと感じること(感じた経験や事柄・苦痛度 等)        「キャリア形成」に対するライフイベントの影響(キャリアを断念すること・再挑戦意向 等)        日本における「女性活躍推進」について(進捗実感・政府や自治体、企業に必要なこと 等)        印象に残った「2021年日本国内のジェンダーに関する出来事」

対象者:属性詳細

[性別]女性(n=3,995)83% / 男性(n=822)17% [年代]20代(n=1,131)23% / 30代(n=2,161)45% / 40代(n=1,525)32% [生活状況]既婚子持ち家庭(n=2,455)51% / 共働き家庭(n=1,284)27%

会社概要

商号 : 株式会社Insight Tech(http://insight-tech.co.jp) 設立 : 2012年6月19日 所在地 : 〒163-1333 東京都新宿区西新宿6-5-1 新宿アイランドタワー 事業内容 : マーケティング調査やレポート作成      自然言語処理・機械学習などの人工知能を利用したデータ解析受託      企業プロモーションやブランディングサポート      不満買取センターの運営

商号 : 株式会社SHeStands (https://shestands.co.jp) 設立 : 2020年3月26日 所在地 : 〒108-0075 東京都港区港南1-9-36 アレア品川13F 事業内容 : 各種イベント、セミナー、講演会等の企画、立案、制作、運営、管理及び実施      各種コンサルティング、指導業務      メディア及び書籍の企画、執筆、制作、運営      マッチング事業      キャリア開発に関する、コーチング、カウンセリング、コンサルティング      企業および商品・サービスのプロモーションおよびブランディングに関する企画、デザイン、コンサルティング      マーケティングに関する、リサーチ、企画、デザイン、コンサルティング

Date
2022.4.10
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2012年6月設立。不満買取センター運営。

マーケティングリサーチを通じ商品・サービス強化・ブランディングを支援。

独自の自然言語処理技術を活用し、

AI(人工知能)モデル構築からシステム開発・運用までをワンストップで提供。

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