女性活躍の鍵は、インフラ整備やルール制定だけでは不十分、メンタルケアや相談しやすい気運醸成にあり

女性活躍の鍵は、インフラ整備やルール制定だけでは不十分、メンタルケアや相談しやすい気運醸成にあり

Insight TechとSHeStands、「日常の悩みとジェンダーギャップとの関連性調査」を実施

株式会社 Insight Tech(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:伊藤友博)と、株式会社 SHeStands(本社:東京都港区、CEO:佐藤圭子)は共同で全国の子育て世代(20-49 歳)男女を対象とした「日常の悩みとジェンダーギャップとの関連性調査」を実施。女性の社会的な活躍やキャリア育成の鍵は、インフラ整備やルール制定だけでなく、メンタルケアの受け皿となる支援サービスや相談しやすいコミュニティの気運醸成であることが明らかになりました。

【要旨】

  • 女性の日常的な悩みには、根深いジェンダーギャップが影響していることが明らかに。
  • 女性の 6 割はキャリア形成を断念した経験あり。再挑戦を望むも躊躇する意見が目立つ。
  • 「女性が活躍できる社会づくり」が進んでいる実感は男性 5 割に対して女性 3 割未満。
  • 悩みを抱える者の潜在的ニーズは、メンタルケアの支援サービスや相談しやすいコミュニティであった。このような受け皿が整い気運が醸成されることで、インフラ整備やルール制定の効果が更に高まる。

共同調査の目的

世界経済フォーラムが 2021 年 3 月 30 日に発表した「ジェンダーギャップ指数※1」において、日本は 120 位と先進国の中では最も低い順位となっています。
コロナ禍となった2020 年は女性の自殺者数が増加しました。※2 その一因として、パート・アルバイトなどの非正規労働者の多さがあり、予期しない解雇・休業を発端とした生活困窮が挙げられています。この背景には、日本の労働環境に根深く残るジェンダーギャップの影響があると考えられています。

※1 ジェンダーギャップ指数:世界経済フォーラムが 2006 年から公表している「Global Gender Gap Report」の中で示される各国の社会進出における男女格差を測る指標。 URL: http://www3.weforum.org/docs/WEFGGGR2021.pdf

※2 2020 年の国内自殺者数:警視庁 「令和2年中における自殺の状況」 URL: https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R03/R02jisatunojoukyou.pdf

こうした状況の中、Insight Tech は、女性たちの経済的、精神的自立に向けた長期的支援を目的としたソーシャルビジネスを展開する SHeStands と共同で、日頃の不安や悩みについての調査を実施しました。Insight Tech が独自運営する「不満買取センター」に登録する子育て世代男女(20-49 歳)が家庭や職場で抱える悩みや不満などの「生の声」を吸い上げ、社会のジェンダーギャップとの関連性を明らかにし、ジェンダーギャップ解消に向けたヒントを得ることを取り組みの目的としています。

調査結果トピックス

  1. 女性の悩みは主に「家庭」「仕事」あるいは「その両立」について。男性は「家庭」より「仕事」に意識が向いている

    日頃の不安や悩みをみると「家事の負担」や「育児や子育て」など多くの項目で女性が不安や悩みを抱える傾向が顕著。共働き世帯では「仕事と家庭の両立」で男女差が拡大している状況が見られ、男性の関与·協力意識の低さが垣間見える。

    <図 1> 日頃の不安や悩み



  1. 女性の9割は異性を羨ましく感じた経験あり。男性は4割が「特にない」と感じている。

    女性の約 9 割が「異性(男性)がうらやましい」と感じることがあると回答していることに加えて、ジェンダーギャップが起因する不安や悩みを抱える人も 7 割を超えている。一方、男性はいずれも約4割が「特にない」と回答。多くの女性が「男性が有利になる状況」が多いと感じており、これが不安や悩みを助長していることが明らかになった。

    <図 2-1> 「異性がうらやましい」と感じたこと

<図2-2>「異性がうらやましい」と感じる内容

<図 2-3>「性別による待遇や立場の違い」が影響している不安や悩み



3. 女性の2-3割は出産や育児・子育てがきっかけでキャリアを断念

女性は結婚、出産、育児がキャリア形成(社会的な活躍)に影響を及ぼす人が多く、自分よりも配偶者の仕事を優先す る傾向が男性より目立つ。約 8 割の人が今後自身のキャリアを断念する可能性があるとしており、自身のキャリア形成の先 行き不透明感・不確実性が不安を助長していることがうかがえる。

<図 3-1>キャリア形成をなにかの事情で断念した経験の有無

<図 3-2>キャリア形成を断念する主なきっかけ

<図 3-3>今後、キャリア形成をなにかの事情で諦める可能性の有無



4. キャリア断念後、女性の6割は再挑戦したいが、自信のなさも露見

育休や産休などでキャリア形成を途中で断念してしまう女性の中で、勤務先への復職や新たなキャリア形成などに再挑戦し ようと考えている人は全体の約 6 割に上る。しかし、一定期間のブランクによって「昔のように体力・気力が続くか心配」や「周囲に迷惑をかけてしまうかも」といった自信のなさや不安を吐露し、再挑戦を躊躇する意見が目立つ。

<図 4-1>キャリア断念後の再挑戦意向【ベース:キャリア形成を断念した人・断念する可能性がある人】

**<図 4-2>キャリア形成に再挑戦したいと思わない理由(フリーアンサーをワードクラウド化したもの) **
【ベース:女性&キャリア再挑戦意向なし n=1,197】

注:文章解析 AI「アイタス」の意見タグ AI により処理し、意見対象部のみを抽出して出現頻度が多いものを大きく表現している。


5. 「女性が活躍できる社会づくり」の進捗を実感している女性は3割未満に留まる

「女性が活躍できる社会づくり(働きやすい環境づくり)」が進んでいるという実感は女性で 3 割未満、男性でも 5 割未満 と全体的に低く、性別差も見られる。共働き世帯の回答に限定しても同様の結果となり、「社会におけるジェンダーギャップ」 が未だ解消されていないことが確認された。


<図 5>現在の日本は「女性が活躍できる社会づくり(働きやすい環境づくり)」が進んでいると感じるか

6. 「女性が活躍できる社会」に必要なものはルールよりもマインドの変革

「女性が活躍できる社会づくり」に対する期待や要望のフリーアンサーを文章解析 AI「アイタスクラウド」で解析した結果、「託 児所や保育園を増やす」といったハード面、「時短勤務や育休取得の推進」のようなソフト面の充実だけではなく、「日頃の家 事や育児への協力意識」のようなマインド面の変革を求める声が多い。
「子育て女性の苦労や境遇への理解」や「職場復帰の後押しとなる環境整備」などのサポートや相談しやすいコミュニティを 整えることが女性活躍社会への寄与が大きい潜在的な課題として明らかとなった。


<図 6-1>女性から見た「女性が活躍できる社会づくり」への期待・要望(AI による解析結果)

<図 6-2>文章解析 AI「アイタスクラウド」による優先課題炙り出しのイメージ

7. 相談サービスへのニーズは存在するが、アクセスは限定的

仕事に関する不安や悩みを相談できる相手は身近にいる「家族や友人」が大半を占める。一方で、カウセリングや専門家の アドバイス、ネット上の匿名コミュニティを実際に利用したことがある人は全体の数%程度しか存在しないが、これらを今後利 用したいと思う人は 1 割程度存在し、潜在的な期待・ニーズがうかがえる。


<図 7-1>「仕事と家庭との両立」の不安や悩みを相談してみたい相手・相談したことがある相手
【ベース:女性&「仕事と家庭との両立」の不安・悩みあり n=1,202】

<図 7-2>「仕事のやりがいやスキルアップ」の不安や悩みを相談してみたい相手・相談したことがある相手
【ベース:女性&「仕事のやりがいやスキルアップ」の不安・悩みあり n=1,008】

Generation Z(高校生)の声


今回実施した調査の結果を踏まえ、GenerationZ世代(高校生)からは以下のような提言がなされた。理想的な社会 像の実現に向け、自身として意識・行動することへの決意がうかがえる内容である一方で、カウンセリングのようなプロの助言 を受ける機会が限られていることが意外であったとの指摘が両チームで共通している。未来を担う世代の活躍をサポートする 機能が求められていることがわかる。

<図 8>Generation Z からの提言

Generation Z による提言(女子高生チーム S)

Generation Z による提言(女子高生チーム K)

アンケート結果に対する提言と今後の展開


(課題のまとめ)

ジェンダーギャップ指数 2021 や今回のアンケートの結果を見る限り、日本社会には依然として根深いジェンダーギャップが存在しており、女性の社会的な活躍やキャリア形成の推進を妨げる原因になっている。

政府・自治体がハード(保育施設などのインフラ拡充)やソフト(女性活躍推進法などの法律や職場ルール)の整備を進 めるだけは不十分であり、生活者自身が潜在的に抱いている「男女の役割に対する固定観念や女性に対する差別的な評価や扱い方」を払拭するマインド変革を促していくことが、ジェンダーギャップの解消には重要である。

日本では自分の不安や悩みの相談にカウンセリングや専門家のアドバイスを利用している人がほとんどいない。アクセシビリティ の問題に加えて、利用に対するネガティブイメージや心理的バリアがあると考えられる。

(提言と今後の展開)

これらを踏まえると、ジェンダーギャップに関する不安や悩みを気軽に相談・シェアできるコミュニティを育てつつ、女性特有のメン タルケアや就労に関する不安を解消に導くメンタリングやコンサルタントのような支援サービスを受けやすい気運を醸成し、活 躍に向けた心理的バリアを解消することこそが、日本のジェンダーギャップ解消に向けた第一歩になると考えられる。活躍に向 けた心理的バリアをなくし女性の自己肯定感を高めることが、結果として男性の協力意識の高まりを促すことも期待できる。

Insight Tech は自社が運営する「不満買取センター」を通じて、日常の不満や不安を気軽に投稿・シェアできるコミュニティ を醸成し、寄せられた声に基づき世の中への課題提起や政策立案につなげていくことで、ジェンダーギャップ解消に向けたハブ の役割を担っていきたいと考えています。

SHeStands は女性のライフプランやキャリアにまつわる相談や悩みに寄り添い、毎日を前向きに生き、豊かな生活をクリエイ トする手助けをすることで、社会の好循環の促進に努めて参ります。


【調査概要】

調査名 : 「日常の悩みとジェンダーギャップとの関連性調査」 あなたの日常生活や働き方に関するアンケート
調査対象: 不満買取センターに登録している全国 20 歳から 49 歳までの男女
調査期間: 2020年12月18日から2021年1月6日
調査方法: 不満買取センターのサービスサイト上でのアンケート
主な質問項目:
あなたご自身について(家族構成・働き方 等)
ご自身の不安や悩み(不安や悩みの有無、コロナ禍の影響・相談、相手の有無等)
異性をうらやましいと感じること(感じた経験や事柄・苦痛度等)
「キャリア形成」に対するライフイベントの影響(キャリアを断念すること・再挑戦意向等)
日本における「女性活躍推進」について(進捗実感・政府や自治体、企業に必要なこと等)

【対象者:属性詳細】

[性別]女性(n=3,556)78% / 男性(n=979)22%
[年代]20代(n=1,048)23% / 30代(n=2,045)45% / 40代(n=1,442)32%
[生活状況]既婚子持ち家庭(n=2,079)46% / 共働き家庭(n=1,226)27%



会社概要
商号  :株式会社 SHeStands(https://shestands.co.jp)
設立  :2020年3月26日
所在地 :〒108-0075 東京都港区港南 1-9-36 アレア品川 13F
事業内容:コンサルティング指導業務
     イベント/セミナー/講演会の企画運営
     マッチング事業
     メディア及び書籍の企画執筆運営

Date
2021.4.01
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2012年6月設立。不満買取センター運営。

マーケティングリサーチを通じ商品・サービス強化・ブランディングを支援。

独自の自然言語処理技術を活用し、

AI(人工知能)モデル構築からシステム開発・運用までをワンストップで提供。

2012年6月設立。不満買取センター運営。 マーケティングリサーチを通じ商品・サービス強化・ブランディングを支援。

独自の自然言語処理技術を活用し、AI(人工知能)モデル構築からシステム開発・運用までをワンストップで提供。